1. After the game
試合のあとで

 

「ごくろうであった」
 王は満足げに微笑んだ。
 臣下たちを集めて武力比べの大会を催し、今、その決勝戦の決着がついたばかり。やはりみなの予想通り、群の中でもぬきんでて優秀な大尉が優勝したのだが、その大尉に敗れて準優勝となった小柄な少年のほうが皆は気になった。
 ところがとうの少年は顔を伏せていっこうに顔を上げようとしていない。それどころか、体がフルフルと震えているのが見て取れた。
「そなた、なぜに顔を隠しておるのだ?」
 王はそう少年に声をかける。
「そなたの歳では準優勝は破格。将来有望であろう。この場にてそなたをシェーン王子のおつきの護衛騎士とする。不満は無いな?」
 少年は一瞬驚いて顔を上げようとしたが、すぐまた顔を伏せた。
「は、はい……」
 今にも消え入りそうな声である。王を前にして緊張しているのだろう、と皆がほほえましく思った。
「そなた、顔を上げよ」
「で、でも……」
「命令だぞ?」
「……」
 もう観念、とばかりに少年はえいと顔を上げた。その顔を見て、王は思わずあっと声を上げた。
「……き、君、どうしてここに!?」
 少年はばつが悪そうに縮こまって、小さな声で言った。
「ご機嫌麗しゅう、陛下……」



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2004.08.01